フォーマルな文書での使用が認められるか否かが微妙な語法や記述法は、多くの言語と同様、英語にも存在します。文脈にふさわしい単語や、文書の種類に応じた句読点の用法なども大切ですが、スラッシュで「and」と「or」をつないだ「and/or」に関していうと、一般的な文書と専門的な文書の間でその扱いはかなり違っています。
この記事では、そもそもこの「and/or」の意味はどのようなものか、そしてなぜこれが議論の対象とされるのか、また、「and/or」が使われる要因と、より正確に情報を伝えるためのヒントを探ります。そして、フォーマルな学術的文書での使用が許容されるものなのかを考えます。
英語の文章の中で、「and/or」という記述をご覧になったことがあるかもしれません。この表記が使われる理由はいくつかありますが、まずは「and」と「or」、それぞれの用法を確認してみましょう。
一般的には「and」では、その前後の選択肢が共に選択され、「or」では前後の選択肢のうちいずれか一方のみが排他的に選択されます。つまり「A and B」では、AとBの両方とも、「A or B」と書かれた場合でAが選択されるとBは排除されるのです。
一文目は、ピザとポテトチップスの両方を、二文目は、どちらか一方だけを食べたいという意味です。では、「and/or」と記述した場合はどうなるでしょうか。
スラッシュ=「/」は、その前後の選択肢のいずれか、あるいはいずれも、という意味で使われます。つまりスラッシュ自体に「and」と「or」の意味合いがあるということです。したがって、「and/or」と表記した場合には、「and」であるかもしれないし、「or」であるかもしれないのです。では、具体的な用例を見てみましょう。
ここで、「and/or」を使うことで、ランチの選択肢が2つから3つになります。
編集者の中には 「and/or」の使用を嫌う人がいます。それは、「and/or」で使われるスラッシュが、意味的に不要な場合や不明確である場合があるからです。主な理由は2つです。1点目は、「or」で接続される選択肢が、厳密には、排他的でないケースがあることです。
「or」が使われているこの一文は、雨と雪の両方が降ることと矛盾しません。ですから、わざわざ“Tomorrow, it is expected to rain and/or snow.”と書く必要はないのです。
また、特定の文脈においては、「and/or」の表記によって、細かい条件や結果が余計に分かりにくいこともあります。以下の例を見てみましょう。
ルールに違反すれば、「100ドルの罰金の支払い」と「30日間の拘留」のいずれか一方が科せられるのか、それとも両方が科せられるのか。分かりにくいという人が必ず出てくるでしょう。誤解のないようにするには、以下のように書き下した方が確実です。
また、主語の選択肢が「and/or」で提示された場合、動詞をそのいずれと一致させるべきかという問題も出てきます。
例文
「sister」は単数形で、「brothers」は複数形のため、動詞は、三人称単数の主語に合わせて「plans」とすべきなのか複数の主語に一致させて 「plan」とすべきなのかということです。
これについては意見が分かれますが、ほとんどの編集者や文法ガイドは、動詞は最後の主語(の選択肢)に合わせるべきだとしています。この場合、最後の選択肢は「brothers」であるため、動詞は「plan」とすべきだということです。
「and/or」という表記はなぜ頻繁に使われるのでしょうか。記述の簡略化、省力化という側面もあるでしょう。すべての選択肢「A or B, or both A and B(AまたはB、あるいはAとBの両方)」を書き出すのではなく、”A and/or B”と書いた方が簡単です。
しかし、一般的な文書において「and/or」を使うかどうかは別として、論文のスタイルガイドでは、その使用の可否が明記されているケースもあります。MLAスタイルのマニュアルでは、「スラッシュは正式な散文ではほぼ必要とされない」とし、「A and/or B」を 「A or B, or both」と置き換えることを提案しています。
APAスタイルマニュアルの第6版では、フレーズで記述した方が明確な場合にはスラッシュを使用しないよう強く求めています。
シカゴスタイルにおいても、カジュアルな文章での使用は認めているものの、正式な学術文章や法律文章では、曖昧性を回避するため「and/or」を使用しない方が望ましいとしています。
ACSスタイルガイドでも「and/or」の使用を避け、表現を明確にするための言い換えを勧めています。
絶対的な正確さと意味の明確さが要求される法律文書においても、スラッシュを使用すれば「曖昧さ」が避けがたく生じるため、編集者や法律学者はこれを推奨しません。
より一般的な文書の編集者の中には「and/or」を用いる人も一部存在しますが、上述のような理由からこの表記自体を嫌う人がいるのも事実です。
学術論文で「and/or」を使うかどうかについては、学術ジャーナルや、学位論文の場合は大学が指定するスタイルガイドに従わなければなりませんが、学術論文の英文校正に特化したTrinkaでは、適用するスタイルガイドを選択することで、「and/or」を含め、不適切な表記がないかを簡単にチェックできます。ぜひ使ってみてください。
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